ステンレス鋼とは
ステンレス鋼は一般に酸化性に強い環境では貴金属にもまさる耐食性を示し、他の金属材料に比較し、多くの耐食環境で不動態化しやすい特徴を有する。
ステンレス鋼は主にマルテンサイト系・フェライト系・オーステナイト系のグループに分けられるが、耐食材料としてはフェライト系とオーステナイト系である。
オーステナイト系ステンレス鋼は通常酸化性の腐食環境の場合、SUS304を使用し、還元性酸には含Moまたは含Mo-Cu鋼のSUS316・317・316J1などを使用する。溶接などによる熱影響がとくに問題になるときは、酸化性環境の場合は、SUS304L・321・347などの低炭素鋼や安定化鋼種を使用し、還元性環境ではSUS316L・317L・316J1Lなどの使用が望ましい。
・主に使用するステンレス鋼鈑の種類
JIS 相当記号 (鋼種) |
特 性 |
用 途 |
SUS301 |
SUS301は引張り強さ、耐力、伸びなどの強度因子があげられる。但し、炭素量が多いので加熱部や溶接部には不向きです。 |
各種ばね材、自動車用部品、電気スイッチ部品など |
SUS302 |
18Cr-8Ni鋼の基準型でNi添加により耐食性、機械的性質が良好です。但し、炭素量が多いので加熱部や溶接部には不向きです。 | 一般用、化学、食品、刃物など |
SUS303 |
SUS303はS、Pの添加により18Cr-8Ni鋼の被削性を改良したものです。但し、耐食性はやや劣ります。Moの添加は耐食性を改善するためです。 | 自動施削される部品、シャフト、ボルト、ナットなど |
SUS304 SUS304L |
SUS302の改良型であり、炭素量が少なく耐食性、溶接性が良好であるため、高級ステンレス鋼として広く用いられています。SUS304Lは極低炭素なので粒界腐食を防止できます。従って溶接のままで耐粒界腐食性を必要とするところに用います。 | 化学工業設備、建築材料、食品製造設備、製紙工業、車輌工業、厨房器具など |
SUS316 SUS316L |
Mo添加により耐食性(孔食)、耐酸性が良好であるとともに高温強度が大です。SUS316Lは極低炭素などで溶接のままで耐粒界腐食性を必要とするところで用います。SUS304より高級耐食用です。 | 石油化学工業、染色工業、繊維工業、食品工業など |
SUS317 |
SUS316のMo量を高め、耐酸性をさらに改良したものです。 | 耐酸性が必要な化学工業施設など |
SUS317L |
SUS316のMo量を高め、耐酸性をさらに改良したものです。極低炭素型なので溶接のまま使用できます。 | |
SUS321 SUS347 |
SUS321には炭化物安定元素であるTi、SUS347にはNb、Taが添加されていますので、溶接したままで使用でき、かつ450〜850℃に加熱される用途にも適します。 | 熱交換機、蒸発器など |
SUS405 |
13Cr鋼にA1を添加し自硬性を軽減したものです。13Cr鋼程度の耐食性が要求され、溶接して使用されるところに適します。 | |
SUS403 |
耐食性の向上と熱処理後の靱性を改良したものです。Si、Crの成分範囲を小さくした高品質のものです。 | バルブ、ポンプシャフト、刃物、ボルト、ナット、蒸気タービン翼、ジェットエンジン部品など |
SUS410 |
耐食性の向上と熱処理後の靱性を改良したものです。 | |
SUS410L |
SUS410よりC量を低くし、溶接部曲げ性、加工性、耐高温酸化性に優れています。 | 自動車排ガス処理装置、ボイラ燃焼室、バーナーなど |
SUS416 |
S、Pの添加により、13Cr鋼の被削性を向上したものです。 但し、耐食性は基準型より劣ります。 | ボルト、ナット、気化器部品、バルブ、複写機のシャフトなど |
SUS430 |
18Cr鋼の基準型で冷間加工性、耐食性がよく、価格が低廉なので広く使用されています。 | 建築材料、厨房器具、硝酸工業、一般家庭用器具など |
SUS434 |
SUS430にMoを添加して耐食性を改良したものです。 | |
SUS431 |
Ni添加により靱性を改良し、Crの添加により耐食性を改良したもので、熱処理のきくマルテンサイト系では耐食性が最も良好です。 | 製紙機械、船舶用シャフト、航空機部品など |
SUS440F |
SUS440LにS、Pを添加して被削性を改良したものです。 |
・主に使用するステンレス鋼鈑の表面処理
1.ヘアライン(記号=HL)
80〜150番で連続したみがき目がつくように研磨して仕上げたもの
2.ナンバー・フォー(記号=4)
150〜180番で研磨して仕上げたもの
3.ナンバー・ツービー(記号=2B)
熱処理・酸洗後適当な光沢を得る程度に軽く冷間圧延をしたもの
・カラー鋼鈑とは
カラー鋼鈑は一般的に鋼鈑の表面に数層のコートを施し、抗菌・耐腐食性・耐候性に優れた鋼鈑ですが、やはり水分には非常に弱く耐腐食性はステンレス鋼鈑にはかないません。
・主に使用するカラー鋼鈑の種類及び表面処理
1.抗菌塗装鋼鈑
溶融亜鉛めっき鋼鈑に化成処理皮膜・プライマー・抗菌皮膜を施した塗装鋼鈑です。
付着した細菌が6〜24時間後に死滅または大幅減菌効果を発揮しまた、塗膜が存在する限り、その抗菌性能は半永久的に効果が継続します。